厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)
重症新生児のアウトカム改善に関する多施設共同研究 Consensus 2010に基づく
新しい日本版新生児蘇生法ガイドラインの確立・普及と その効果の評価に関する研究班
本邦における新生児低酸素性虚血性脳症に対する低体温療法の指針
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適応基準
A:
在胎36週以上で出生し、少なくとも以下のうちひとつを満たすもの
- 生後10分のアプガースコアが5点以下
- 10分以上の持続的な新生児蘇生(気管挿管、陽圧換気など)が必要
- 生後60分以内の血液ガス(臍帯血、動脈、静脈、末梢毛細管)でpHが7.0未満
- 生後60分以内の血液ガス(臍帯血、動脈、静脈、末梢毛細管)でBase deficitが
16mmol/l以上
適応基準Aを満たしたものは、Bの神経学的診察の異常の有無について評価する。
B:
中等症から重症の脳症(Sarnat分類2度以上に相当)、すなわち意識障害(傾眠、鈍麻、昏睡)および少なくとも以下のうちひとつを認めるもの(新生児低酸素性虚血性脳症に詳しい新生児科医もしくは小児神経科医が診察することが望ましい)
- 筋緊張低下
- “人形の目”反射もしくは瞳孔反射異常を含む異常反射
- 吸啜の低下もしくは消失
- 臨床的けいれん
適応基準AとBをともに満たしたものは、可能であればさらにa EEGによって評価することが望ましい。
C:
少なくとも30分間のaEEGの記録で、基礎律動の中等度以上の異常†もしくはけいれん‡を認めるもの。この際、古典的脳波計による評価は基準としては採用しない。
† 中等度異常=upper margin > 10µVかつlower margin < 5µV もしくは
高度異常=upper margin < 10µV
‡ 突発的な電位の増加と振幅の狭小化、それに引き続いて起こる短いバーストサプレッション
除外基準
冷却開始の時点で、生後6時間を超えている場合
在胎週数36週未満のもの
出生体重が1800g未満のもの
大きな奇形を認めるもの
現場の医師が、全身状態や合併症から、低体温療法によって利益を得られない、あるいは低体温療法によるリスクが利益を上回ると判断した場合
必要な体制がそろえられない場合
施設基準
低体温療法を行おうとする施設は、以下の要件を満たすことが望ましい。
診療報酬点数上で新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit; NICU)加算の認められた病床を有すること。
72時間の冷却中と復温が完了するまでは、可能な限り高い看護体制(1:1~1:2)を敷くことができること。
新生児の頭部磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging; MRI)の撮影が可能なこと。
NICU内で標準脳波検査や振幅圧縮脳波(amplitude-integrated electroencephalogram; aEEG)などの脳機能モニターを施行できること。
脳波の判読に習熟した新生児科医、小児神経科医、さらに新生児の頭部MRIの読影に慣れた神経放射線科医がいること。
胎盤や脳組織の病理検査、死亡症例の病理解剖ができること。
多分野の専門家と相談しながら長期フォローアップを行う能力のあること。